上野 奈津

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三時間かけて私を地元へと運ぶ、一本の特急列車。 どうやら長いこと眠っていたらしい。 車窓から目に飛び込んだのは、夕日の光が反射して煌めく銀世界。 ついさっきまでの景色には、雪なんてこれっぽっちもなかったのに。 電車はずいぶん北へと進んだようだ。 袖を僅かにたくし上げて左手首を出すと、時計の針は四時三八分を指していた。 目的地兼終点に到着するまで、あと一時間ちょっと。 再び目を閉じて、今さっき思い出した『タイムカプセル』に思考を傾けた。 当時小学四年生だった私が『タイムカプセル』と呼んでいたのは、自由帳の一ページを破ったいびつな紙。 「○年後に開こうね」っていう、カプセルでも何でもない、なんちゃってタイムカプセル。 そこに何かを書いて、ポケットに入るくらい小さく折り畳んだ。 折り畳んだ紙の表には、当時流行っていたアニメのイラストを描いた。 そして下手くそな絵を囲むように記したのは、『タイムカプセル』の四人の製作者の名前―「ハル、隼人、将平、奈津」。
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