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大丈夫だ。
全然、笑える。
「じゃあ適当に座っててよ、僕作るから。」
「んー、じゃあお願いしちゃおっかな。」
学ランを脱いで鼻歌を歌う晴斗。
2人共有のエプロンを着て、キッチンに立つ優斗。
(……ブラコン、いつになったら治るんだよ。
兄さんに初カノが出来たんだぞ。心から喜んでやれよ、自分)
沈む心とは裏腹に、ハンバーグを作る手だけは、やけにスムーズだった。
「……ねぇ。」
「ん?」
「……おめでとう。」
背を向けたまま、優斗は呟いた。
今自分が、喜んでいるのか悲しんでいるのか、はたまた怒っているのか悩んでいるのか、よくわからなかった。
「ああ!」
晴斗は何も知らず、いつもみたいに明るい笑顔でニカッと笑った。
(うん、大丈夫だ。
僕、おめでとうって言えた。
おめでとうって思ってる)
優斗は自分自身に言い聞かせる。
(兄さんごめんね。僕、兄さんを取られたくないからって、叶いっこないなんて思って)
兄を取られたくなかっただけだ。
今に慣れる。
そう思って疑わなかった。
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