名前のない感情

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。。。。。 真冬の夜。 優斗はその日、学校で勉強をしていた。 晴斗には、『20時に帰るから』と、あらかじめ言ってあった。 しかし勉強が早く終わり、優斗は18時に家に帰ることにした。 寒い夜道を歩き、『もう冬だなぁ』と、しごく当たり前のことを考える優斗。 (ストーブを押し入れから出さなくちゃな) スニーカーで地面を踏む。 足に硬い感触が伝わった。 (雪が降ったら、兄さん大はしゃぎするんだろうなぁ) 降る雪にハイテンションになる晴斗を想像し、優斗はクスリと笑った。 晴斗なら絶対、雪合戦をしたがるだろう。 そして自分は、呆れながらも応じるのだ。 そうだ。全然寂しくなんかない。 カンカンと、アパートの階段を上がり、『香山』と書かれたネームプレートが貼られたドアへとたどり着く。 晴斗が先に帰って来てるだろうから、ドアは開いてるだろう。 案の定、ドアは開いていた。 優斗は『ただいま』を言おうとして、口を開いた。 だが、実際声は出なかった。 玄関に、靴が2足あったからだ。
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