名前のない感情

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ドクン 心臓が、怪しく鳴った。 晴斗のスニーカーと、一回り小さいローファー。 おそらく、赤須賀まなみのものだった。 ダメだ、一旦アパートを出よう。 邪魔しちゃ悪い。 頭で戒めても、フラフラと体だけは勝手に動く。 ダメだやめろ。 やめろやめろやめろ。 頭と体は、正反対の行動を取っていた。 アパートの部屋は、ふすま1枚で隔たれてあった。 そこから聞こえる音は、男女の吐息と妖艶な水音。 心臓が、破裂しそうなくらいバクバク鳴った。 『そりゃそうだろう。だって恋人同士なんだから』と思う面もあった。 2人は高校生だし、そういうこともするだろう。 冷静な自分が、どこかにいた。 優斗は音を立てないように歩き、ふすまから漏れた光を覗いた。 もう自分を今動かしている原動力がなんなのか、検討もつかなかった。 そこには、予想通りの光景があって。 そういうものを見たのは、初めてだった。 AVは年齢的にまだ観れないし、ネットの動画で観た経験もなかった。
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