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衝撃的だった。
同時に、またあの、名前のない感情が顔を出した。
優斗は何も考えないようにして、その場をそっと離れ、トイレに入った。
電気もつけず鍵を閉め、ドアにもたれる。
「……っは……。」
意味不明な吐息が、口から溢れた。
わからないわからないわからない。
何もかもわからない。
頭の中がフリーズして、ズキズキと痛みを伴った。
優斗はズルズルと、背中をドアに預けたまま、しゃがみこんだ。
そして、顔を膝に埋めた。
「……はぁ……。」
淀んだ溜息。
ずっとここに閉じこもっていたい。
このまま、ずっと。
ああ、今見た記憶を、神様が全部消してくれればいい。
綺麗さっぱり忘れたい。
そんなの、
「無理だよなぁ……。」
自嘲的な笑い声が、口から漏れた。
優斗はしばらくそこで、顔を膝に埋めたままにしていた。
そのうち、ドアの向こうの方で話し声がした。
「もう私帰らなきゃ。親が心配しちゃう。」
高い声は、赤須賀まなみのものだった。
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