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青い絵の具と白い絵の具を筆でかき混ぜてキャンバスへ色をのせる。
筆が歩く音を心の声があやふやにした。
「きれいだよ」
彼女に向けての言葉だった。
「本当にきれいね」
彼女は微笑みながら窓の外を見る。
真っ白な雪が降り積もり彼女の白い肌を一層に引き立たせていた。
彼女は僕の気持ちに鈍感だと思う。
「できた」
僕は描き終えたばかりのキャンバスを彼女の方へ向けた。
絵を見た彼女は眉を顰める。
「残念だわ。貴方はただのキャンバスに命を吹き込むことができるのに」
僕はその言葉に頭を掻く。
「うまく描けたと思うんだけどな」
「確かにうまくかけているけど、私はなぜこんな冴えない顔をしているの?」
僕は絵を見る。
絵の中の彼女は寂しそうに何かを見つめていることに気づく。
彼女はいつも笑っていたのに。
「その絵は貴方よ。どこか不安定に舞い落ちる雪のような迷いがある。私はその迷いを消してあげたい」
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