読みかけの本

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窓の外を見れば雪が降り積もる。 シンシン…… 音もないのにそんな言葉がよく似合う景色だ。 「ねえ、明日あたしは本当にお嫁に行けるのかしらね?」 音のない空間でお嬢様がそっと呟いた。 明日、お嬢様はお嫁に行く。 落ちぶれた華族に目を付けた成金の元へ。 年もお嬢様のお父上と変わらないというのに。 「この本、今夜中に読まないと」 荷物は全部運んでしまった。 明日は身一つでお嫁に行くのだ。 「お嬢様」 「なに?」 「一緒に駆け落ちでもしましょうか?」 そう言うとお嬢様は少し驚いて、それから柔らかい笑みを見せた。 「ねぇ、どこに行く?」 「どこへなりと」 「遠くがいいわ。誰もあたしを知らないどこか」 「ではそういたしましょう」 そしてお嬢様は栞をそっと挟んだ。 【END】
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