第1章 ゴミ捨て

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 私はしばらくボーっと立っていたが、ハッとした時には女性の顔を二度と忘れられなくなっていた。  ゲーセンにまどろむ頭で入ると、片隅にあるいつもやるガンシューティングゲームをした。スコアは上がったが、頭ではいつまでも……あの女性のことを考えていた。胸が苦しくもあり、頭は霞がかってもあり……。 「おい、夜鶴!」  その次の日の夜勤では、島田が私の顔を見ては茶化していた。 「お前。今恋しているだろう? 俺には解るんだよ! 誰だか教えてくれー!」  島田が好奇心旺盛な顔を向ける。  自分でも何が起きたのか解らない。 「あ、そうじゃないとは思うんだがな?」 「そんなはずは……絶っ対にない!! 俺には解る。俺が弥生と出会った時もそうだったんだぜ」  島田が肉を手早くシューターに入れながら話す。その目は真剣のようでどこか面白がっていた。 「こらー! そこ無駄口たたくなー! で、誰なんだ?」  田場さんがこちらに駆けてきた。 「あ、そうじゃないと思います」 「俺も昔はそんな頭と顔を毎日していた時もあったなー。で、誰なんだ?」  田場さんは35年も生きているのだ。 「はあ……そうなんですか?」  私はどうしたのだろう。あの日から頭と顔がまるで別人のようだ。心はあの人のことを考え、あの人の鮮明な顔が離れることはない。心を占めるのは、あの時のままだ……。  連続する同じコンビニでの彼女が頭を過る……苦しい……。 「式は何時なんだ? スリルはいいぞー」  島田の声が耳に入ると、私のまどろんだ頭にスリルというのがチクリと刺さった。 「本当だ。スリルはとてもいいぞ。俺のように奥さんのためにロケットランチャーを買わないか?」  田場さんは仕事の注意を忘れていた。 「スリル……。……奈々川……晴美さんと結婚……?」 「ははっ! 奈々川さんか! どこに住んでいるんだ? 教えてー!」  島田は喜んでいるようだが。私は心底震えそうな心境になった。 「奈々川 晴美さん? はて、どこかで聞いた時があるぞ?」  田場さんが茶化す挙動を一時停止した。 「田場さんー。俺にも教えてくれよー」  島田は珍しい豚肉をシューターへと入れた。 「奈々川 晴美。確かB区の相当な金持ちのお嬢様のようだ。前にB区のテレビで放送されていたはずで、俺も一回だけ観たんだだが。」 「ええええ!」
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