第2章 板挟み

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 私はコンビニ弁当のレタスを口に持って来ていた。そういえば、火曜は休みにすればいいんだ。また、彼女に会ってみよう。スリルか……。私と奈々川さんがもし……。一緒になれたら、マシンガンを買うだけでは済まないな。  それに、私には金がない。  家はアパートの1Kと少なからずの貯金。このA区では珍しくもないのだ。B区には税金がなく。A区には高い税金がある。不平等税 税収制度というものがある。そういう世界だ。 B区でのサラリーマン時代の貯金は大変な違約金で……無くなった。B区では一つの会社に終身雇用契約をしてから入社試験を受ける制度だ。そして、違約金が発生してしまう。仕方なく、家賃の安いA区へと移り住んだ。  税金があるのは辛く、B区の奴らには馬鹿にされ命を狙われる。  金がないと高い弾丸が買えなくなり、銃も買えない。  B区のお嬢様か……何か方法は? 「でも、もう一度会ってみればいいか」  私は方法を考えることも大事なのだが、正直……奈々川さんにまた会いたかった。  私はまた火曜に休みをとって、頼まれた島田のゴミをとりに205へ行った。私の顔を見ると、島田の奥さんの弥生は車椅子でキーコキーコとやって来た。 「ねえ、その奈々川って人。今日も会えるの?」  弥生は興味というより心配の表情が汲み取れる顔をしていた。 「ええ。恐らく……」 「会ってからじゃ遅いから、今言っておくわね。その奈々川さん。名を晴美というんだけど、B区の総理大臣の娘なの……。私、昨日の昼のテレビで観たのよ……。顔はここから窓で確認したわ。捜索願も出てるの何でも家出してきたそうよ。」  弥生が今度はしっかりと心配な声をだした。 「え?総理大臣の……」   私はB区の総理大臣……このA区だけに税金を課し、A区に強制的にB区をサポートするような政策をし、ひどい治安の悪さにも見向きをせずに。A区の人々に選挙権を奪い。終身雇用契約制度を生み出した。などなど……。  B区とA区の深刻な格差を現わしてしまう政治をした張本人。B区の発展と日本の発展だけに血眼になっている人物だ。 「そんな……」  私は奈々川さんがそんな人物の血を受け継いでいることを認めたくはなかった。 「でも、取り合えず行ってみてよ。きっと、幻滅するだろうけど。それと……危険を察知したら……銃を抜いてね。きっと、何かがあるわ……」
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