第2章 板挟み

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 弥生が緊迫した顔に不安を浮かばせている。  弥生も生粋のA区出身の人だった。  ゴミを受け取り一階に降りると、外は雨が降っていた。急に降り出したようだ。 「ありがとうございましたー。今度はフライドチキンもどうですかー」  今度もコンビニから奈々川さんが出てくるところだった。  手にコンビニ弁当を携えて、片手に傘をさしている。  私は携帯したリボルバーの弾丸が今はいくつあるのかと、数えながら奈々川さんへと近付いた。 「おはようございます。雨……降っていますよ」  奈々川さんは傘を私が入るようにと、向けてきた。 「ええ。そうですけど、両手にあるゴミのせいです」  私は両手に持ったゴミを軽く振った。 「一つ持ってあげられない……ごめんなさい」  奈々川さんは悲しそうな表情をした。  こんな人があの総理大臣の娘。  私の頭は空から降る水滴から守られる。奈々川さんが傘の中に入れてくれたのだ。 「あの」 「うん?」  奈々川さんは目元のホクロがチャーミングな顔を向けた。まじかで見ると年が私より若く見える。初々しいというのか瑞々しい肌の持ち主だった。 「あの……テレビであなたを見ました。あなたの名前は奈々川 晴美。総理大臣の娘なんですね」 「……」  奈々川さんは一瞬、凍りついた。けれど、少しの間で笑顔が出来るが……プラスチックのような作り物なのがすぐに解った。 「そうです……。あんな父ですけど、いいところもあるんですよ」 「なんでこんなところへ?ボディガードもつけずに……?」  笑顔が崩れ、俯いた。 「強引な結婚を要求されたの。好きでもないし。それに……」 「本当にあの総理大臣の娘ならば、ここA区にいるのはまずいのでは?ここには君の父親が税を課したり、住み心地もよくないし。正体がバレると命の危険もある。なのになんで?」 「このA区には税金があるのは知っています。でも、それはB区に税金を課せないためとよく父が言っていました」 「治安が悪いのは? このA区はB区の奴らに食い物にされているじゃないか?」 「それは違います。いつか取り組むと言っていました。治安の方がそれによって凄く良くなって……。A区には田舎の良さだけが残るだろうって、父が言っていました」  私は今まで総理大臣に悪いイメージを抱いていたのだろうか?いや、事実を列挙しただけではないだろうか?
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