第3章 探偵

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 スケッシーが野良犬のメスを発見、早く散歩の続きをと急かす。 「わんわ、わん」  仕方なく、藤元を置いて散歩を再開した。 「いつかきっと! 信者をたくさん集めてやる!!」  藤元の断末魔が轟いた。  島田はこのアパートの二階にいるが、私たちはいつも電話を使っている。 「夜鶴。奈々川さんってどこのお嬢様なんだ? B区のどこだ?」  島田が電話越しに言う。 「いや……知らない」  島田には奈々川さんが総理大臣の娘とは言わなかった。弥生もその様子だ。島田の気性ではB区と全面戦争をしてもおかしくはなかった。 「本人に聞いてー」  島田が猫なで声を発した。 「いや……本人も言いたくないそうだ」 「ふーん」  後ろの奈々川さんはスケッシーと遊んでいる。私の部屋に総理大臣の娘をB区の奴らから匿っているなんて、確かに言えない。 「ゲームの調子はどうだ?」 「まあまあかな?奈々川さんとやったら200点になった」 「お前……天才じゃない?」 「ははっ」  島田は何点なのだろう? 「俺なんてまだ100点にもいかないぜ。銃撃戦の時はお前の方が強いな。接近戦というか殴り合いは俺に任せろ」  島田がこれからの身に置きそうな作戦を言った。 「ああ」  今日の早朝のこともあるし、仕事は本当に命掛けになってきた。しかし、金のためには仕方がない。どちらも……金がなくなっても死ぬし、撃たれても死ぬし。これが私が望んだことなのだ。 「夜鶴……。銃の手入れはしっかりな」  島田が珍しく真剣な声をだした。  職場へとスヌーピーの絵のある愛車を駆る。夜風がこんな場所だが気持ちがいい。一日1万2千円の夜勤の仕事を止める訳にはいかないのが今の厳しい現状だ。  嵐の前の静けさなのか、広い駐車場には誰もいない。  受付のところまで、片手は腰のリボルバーに付けて歩いていると島田もやってきた。  島田はなんとベレッタをだしたまんまだ。  受付の女性に、 「おはようございまっス。田場さんは?」  いつもの気楽な口調である。 「はい、田場さんは奥の休憩所でミーティングだそうですよ」 「ああ。って、俺たちのことを話しているの?」  女性はペロっと舌をだして、
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