第1章 ゴミ捨て

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 田場さんは心配な表情というより可笑しいといった顔をする。  田場さんは私と島田がA区なのを知っていて、田場さんはB区出身なのだそうだ。けれども、人柄がいいのでA区の人でも分け隔てがない。心強いA区の私たちの味方でもある。  私はロッカールームで着替えると、島田がいるであろう肉の仕分け室へと急いだ。  ベルトコンベアーは4本あって、20人くらいが間を挟んでいる。肉の仕分けなので、肉を入れるシューターがところどころにある。  肉は牛肉がメインだ。  たまに豚肉や鶏肉が流れてくる時もある。  島田の隣へと行くと。 「あいつ。ぶっ飛ばしてやろうか!」  茶髪で長身の島田が吠えている。均整のとれた顔をしているが、左の目元に青い染みがある。 「大丈夫か?」  肉が均等にベルトコンベアーを流れ、私と島田は慣れた手の動きで肉をシューターへと入れながら互いに顔を見合った。 「ああ。車も無事だ。けど、今度あいつを見かけたら……銃だな」 「ははっ」 「そりゃそうと。好きな人とか特別な人とか……見つけたら? もう結婚してもいい年齢だし」  島田が唐突に言った。その顔は確かに好奇心が滲み出ている。  私は少し考えた。確かに結婚が出来る年齢を満たしているが、かなり深刻な経済的な問題を抱えている。 「いや、今はいい」  私は金のない男だ。 「俺も結婚した時は、すぐに奥さんにも銃を持たせたぜ。お前もそうすればいいんじゃないか?そうすれば安心だし」  島田が珍しい鶏肉をシューターへと入れる。 「俺にはそんな度胸は無いよ。それに、好きな人ならサラリーマン時代にいたさ」 「なら、今からでも遅くはない! 明日の火曜日に会社へゴーだ!」  島田は片手で肉を取り、片手で遥か遠くの会社があるであろうところに指を持っていく。 「あー……やっぱりいいや。明日はゲーセンさ。恋愛よりは安全な刺激的体験をしたいのさ」  私は頭を掻いた。 「つまんない人生だって、俺は思うぞ。やっぱりスリルはあると人生楽しいぞ」 「それはそうだ。けど、なんかこう……。B区の奴らに殺されたら奥さんが可哀そうだし。仕事中だってやばい時あるだろ」 「それでも、結婚するから楽しいんじゃないか?」  田場さんが近くを通る。
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