第1章 ゴミ捨て

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「ああ。夜ちゃん。島ちゃん。最近の都市開発プロジェクトの実体って知ってる? ただ単にA区とB区の治安の悪いのはそっちのけで、アンドロイド達にB区だけを発展させているんだ」  津田沼は新聞が好きだ。たまに政治などの世間に起きている話を持ってくる。 「ふーん、やっぱりな。ま、いいんじゃね。俺たちには関係ないし」  島田は世間で何が起きていようと生活が第一だったようだ。 「B区だけってわけか」  私も云話事町TVで昔放送されていたので、世間に何が起きているのかは少しは知っているのだが,……私も生活面の方で頭が一杯だった。 「お、その自炊弁当なかなかの出来じゃねぇ?」  島田が津田沼の弁当を茶化した。見ると、いつもの日の丸弁当の脇に目玉焼きが顔を出していた。 「ふふ、お前、自炊は諦めて結婚したら?」  私の一言に、小太りの津田沼はメガネを持ち上げる。 「結婚かー。俺はこれはこれで好きなんだがなー。日の丸弁当は仕事へのやる気を醸し出し……目玉焼きは日の丸に似ているし……」 「まさか、結婚しても奥さんにそれ作らせるとか?」  島田が愛妻弁当のウインナーを箸で持ち、津田沼に突きだした。 「うーん? そうかも知れない」 「あはははっ、仕事一筋だな」  私はコンビニ弁当の肉の部分を頬張る。 「じゃあ。お疲れ」  島田がベレッタを片手に持って、車のハンドルを握る。   私は島田の肩を叩いてから愛車へと歩くと、津田沼が血相変えて走って来た。 「B区の奴がさっき倒れたって!」  津田沼が不安げな声で捲くし立てる。 「でも、俺たち関係ないから。きっと、何かの病気か怪我さ」  私は気にせずに愛車のドアを閉めた。  火曜日 朝の8時。 「おはっよーございます! 云話事町TVでーす!」  美人のアナウンサーが元気よく話しだす。 「今日は映画ドラゴンハンターミザリスに出ていたドラゴンのライライちゃん(9才)のインタビューです!」  美人のアナウンサーは住宅街を背に巨大なドラゴンにマイクを向ける。 「グワオーン!」  テレビは賑やかだ……。 「特殊撮影……じゃ……なかったんだな……」  私もその映画を観たが……実物だったなんて……。
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