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ああ…………雪。
何時から降っていただろうか、気づけば降り積もっていた。
それは全ての物を覆い、視界に入る全てを白く見せ、まるで今までそこにあったものが最初からなかったような錯覚に陥らせる。
そう……誰もがそうであるだろう。私はそう思っている。
…………そうであってほしい。
雪景色にしんみりと佇む古屋敷、その一角の部屋。
空から落ちてくる白い結晶を虚ろに眺めていると数時間前の出来事がまるで夢か幻だったかのようだ。
何もなかった……何もなかった。
自己暗示をかけるように心の中で繰り返し呟いていく。
本を閉じ、長い黒髪を震える左手で軽く撫で下ろすと少し落ち着きを取り戻した。
「……と、言う訳で貴女が全てを背負う事はないんですよ」
探偵さんの推理に対する答えを模索する。
「私は……私は……」
ふと血塗れの栞を見てしまい思い出してしまった。
私の身に起きた……悲劇。
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