深夜のコンビニ

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深夜のコンビニ

 時刻は午前三時。  世間のほとんどは寝ている時間だけど、俺は今がお仕事タイム。  コンビニの深夜アルバイト。二十四時間営業が売りなので店を開けてはいるけれど、普通に考えてお客の来る時間じゃないし、深夜はバイトも割り増し料金。だから経費削減で、店員は俺一人。  でも店内には、こんな時間なのに山程の人影。  ざっと目についただけでも、雑誌棚の前に二人、飲料ケースの前に一人、弁当前に二人、菓子コーナー二人、酒の所に一人、ふらふらさまよってるのが一人。  別に、近くに歓楽街があって、営業を終えた水商売の方々が立ち寄っている、とかじゃない。  店はどちらかというと田舎の立地で、深夜に開けておく必要があるのかというレベルだ。この時間の場合、客なんて、数日に一人くればいいところだ。  …ほら、その、数日に一人のお客さんが来た。でも様子がおかしい。店に入って来るなり店内中を見回し、真っ青になった後、あわあわと声にならない声を上げて店を飛び出して行った。  もしかして、強盗目的だったかな。だとしたら、おそらくは暫く外で店の様子を窺っていただろうから、入って来てさぞ驚いたことだろう。店員以外いない筈の店の中に、十人近い客がいたんだから。しかもその面々が、いっせいに本性丸出しでぎょろりと自分を見てきたんだから。そりゃあびびって逃げるよな。  強盗未遂の男が去れば、店内はまた元通り。人影はさっきのままの位置にいて、やがて、朝の光と同時に消えた。  立地的なことなのか、他の理由なのかは知らないけれど、ここの店は、深夜になると幽霊が大量発生する。といってもただいるだけで、何の悪さもしない連中だ。
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