雪は思い出のように

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 彼女は『神の手伝い』をしている。仕事は『死者の選別』だ。  人が死ぬと、その人生を記録した本が彼女の手元に届く。本には、死者の名前を記したしおりが挟まれている。  彼女は本を読んだ後、しおりを捨て、代わりに赤か白の椿を挟む。赤椿なら、死者は生まれ変わる。白椿なら消滅し、永遠の闇に消える。  少女は、夭折した人間だった。死後、神に拾われて、手伝いをするようになったのだ。50年以上前のことだ。生前の記憶はほとんど残ってない。  ――はずだ。  この名前を見て『なつかしい』と思ったのは、気のせいなのだ。  彼女はしばしためらった後、椿を手に取った。
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