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「雪、だいぶ積もったわね」
私が本を読んでいると、貴女は言った。
「そうね」
ここは随分里から離れている。
もう人は来られないだろうから、旅館はしばらく休業だ。
「もう、誰も来ない
………やっと、二人っきりになれた」
その言葉にため息混じりな吐息が私の口から零れる。
だって、違うじゃない。
『人』と呼べるのは、貴女だけ。
貴女は一人っきりで、私を独占するだけ。
「………そうね」
せめてもの情けで、私は言葉を返す。
私たちを閉じ込める雪は、無情に白かった。
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