第1章

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「雪、だいぶ積もったわね」 私が本を読んでいると、貴女は言った。 「そうね」 ここは随分里から離れている。 もう人は来られないだろうから、旅館はしばらく休業だ。 「もう、誰も来ない ………やっと、二人っきりになれた」 その言葉にため息混じりな吐息が私の口から零れる。 だって、違うじゃない。 『人』と呼べるのは、貴女だけ。 貴女は一人っきりで、私を独占するだけ。 「………そうね」 せめてもの情けで、私は言葉を返す。 私たちを閉じ込める雪は、無情に白かった。 image=497398758.jpg
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