季節の変化

6/68
前へ
/100ページ
次へ
「そ、そうかな……なら、自信持つね」 「そうだよ! じゃないと、ユウちゃん拗ねちゃうからね~っと、まずは集合場所に行こうよ」  それに頷く美希は、会話前と比べて、些か、固い表情が取れている気がする。きっと、服に自信が無かったんだと思うけど……それは良く良く分かる。  遊香が選んでくれる服装は、本当にセンスが良いと思うが故に、逆にその服によって、自分が浮いた存在になってないか? と疑問にもなってしまうが……  実際、遊香コーディネートは、周りから誉めて貰った事しかない。  そんなこんなの想いで、駅の中をゆっくり歩き出す。この時間は、これから何処かに遊びに行くのか、若い人々が多い気がするし、勿論、カップルや家族連れもあちらこちらで見られ、なんだか羨ましくもある。  小さな幸せを眺め、私も一緒に誠吾さんと歩きたい。なんて想いが妄想となると、短時間で脳内で誠吾が隣を歩き、ちょっと手なんかつないで視線が合った時、小さく微笑……  ――カァァアッ! はぅぅ! い、良いかも……車も良いけど……街中歩くのもありだよね!? 「……? 母雲ちゃん?」 「……」 「……あらら、なんか妄想してるみたい。フフフッ」  最近増えた、母雲の妄想暴走。美希は分かってるからこそ、小さく微笑み、そっ、とする。  特に彼氏が出来てから、友人が意識飛ばす数が増えたけど、小説好きな自分も妄想は得意なだけに、理解なる。  集合場所までは、ここから五分位だから、そこまでには脳内の整理整頓付くはずだと、通行人とぶつからない事だけを注意しつつ、先へと歩き進む。 「おっ、来た来た! おっはよー!!」  駅から出て少し進む所に、巨大な時計台があり、その真下では、二人の少女が此方に気付き、遠くから手を振っていた。  元気そうに手を振っている小柄な少女こそ、みんなのコーディネータであり、ムードメーカーと言える菜下遊香(ななしたゆうか)である。  夏休みから、背中まである長い髪を淡い茶髪に染め、本当に高校生かと疑いたくなる幼い顔と背の低い彼女だが、元気いっぱいで誰より何より明るい。  今日も素敵な服装の彼女は、上は白いかき編みニット、下は薄いピンクのパンツ、足元も白で揃え、極めつけに頭には、白いボーラハットを乗せるその姿は、小さい彼女を大人の様に演出させていた。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

131人が本棚に入れています
本棚に追加