祓魔師と陰陽師

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「妖魔にする事件でしょうか?」 「内容聞かれてしまえば、隠しようが無いよね。ご名答で、まさに妖魔絡みみたい。でも、これがこっちの目論見の妖怪沙汰かは行って見ないとわからない……ってな事で、そっちに向かうので、これで失礼するわよ」  カツ、と靴を鳴らし、今ままさに走り出そうとする刹那の時に、母雲は考えてしまう。この瞬間、この街の何処かで妖怪が起こす事件が発生した。それが、夜道怪なのか、化け蟹なのか、その他の妖怪なのかは、確かに行って見ないと不明だ。  それでも、人々が……闇を知らない者が襲われる現実を前にし、そして、半妖怪と呼ばれる現象を纏う今の自分は、決して無力ではない。  それでも、迷惑を掛けてしまう恐れがある。彩魅と愛菜、祓魔師として、陰陽師として居る今の二人のやるべき事を乱す選択を選んでしまう事が……余計なのではないか。  脳内の葛藤は、刹那であり、浮かべる映像は、瞬きの間。そこに浮かんだのは、妖魔の恐怖を真に知った記憶の断片達であり……故に、叫ぶ様に声を出す。 「――愛菜ちゃん! 私も着いて行きますッ!」  その発言が、場を流れを止めるに値するからこそ、愛菜の足もまた止まっていた。 「き、母雲ちゃん? 何を言ってるか、わかってる?」 「わかってますッ! どんな妖怪が何をしているのかは知りませんが……放っておけない」 「いや、これは、陰陽師の仕事だからさ。こっちに任せてくれて良いんだよ。聖女も黙ってないで」 「はい。三神様の言う通りです。今回は、街の中で事を起こす妖魔となれば、かなりの厄介かと思われます。退魔に関しては、熟練した者が当たる事こそ、被害も最小限に留められましょう。ですから、此処は三神様にお任せするのが宜しいです」  彩魅もまた、母雲に向き合いながら現実を言葉にしてくれる。それでも、今のこの時間……そう、肩に居るクオの存在が、不思議と力を与えてくれる感じがした。 「彩魅ちゃん……どんな妖怪が居るかわかんないけど、迷惑かける妖怪絡みなら……見て見ないふりをするのは、難しいよ」  ごめんね。余計な事を言ってる。そんな表情を浮かべれば、彩魅だって馬鹿ではない。 「私は白面金毛九尾の狐の監視です。母雲ちゃんの動きを監視する者であります。忠告は致しました」  紅玉の瞳が愛菜に向かう。決めるのは誰でもない、母雲であると瞳が語る。
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