祓魔師と陰陽師

27/32
前へ
/100ページ
次へ
「母雲ちゃん、妖怪の気配を感じたのですか?!」 「うん……足が動くんだよね」 「……? 足が動くって、どう言う事??」 「母雲ちゃんは、妖怪を一定距離で捕らえると、身体が妖怪の元へ、引き寄せられる体質があるのです」 「……それって、厄介な体質ね。まあ、いいわ! しっかり守ってあげるから」  既に呪符を持つ。彩魅も小さく呪文を唱え、手元に神聖書を呼び出し、此方も体勢を整えていた。  対する母雲は、自分の意思を無視する足の動きに、心臓の動きが激しさを増して行く。一歩が確実に妖怪の元へと向かうならば、どのタイミングで戦闘になってもおかしくない。  そんな恐怖……確かに自身で望んだが、出来ればやっぱり来ない方が賢明だったかも。とすら思えてしまう。 「……うむ、もっと、キビキビ動け」 「む、無理です……私の思い通りにならないですから」 「そんな事あるまい? 儂とて少し学んだぞ? その現象は目的以外の場所には行けまいが……ほれ」  ――バシッ、と銀の錫杖が母雲のおでこを強打する。 「――ぃたぁ、な、何をするんですか!? ――ぁ、ぁれ!?」  思わぬ痛みに目を瞑り、声にしたところで気付く。足の歩む速度が、急激に上がったのだ。 「クククッ、汝は、恐怖のあまり、無意識に身体を制御しておる。本来は、妖魔に対してもっと早くに進もうとしておるのじゃ」  ――い、要らないお世話です! と涙目になるのだが、偉そうにしながら、その特性に気付いた狐様は、得意気にしている。  動き速くなる足先は、歩道橋へと向かい、階段を上って行く。交通量の多い六車線ある道路を渡る為の大きな歩道橋。上り切って、ちょうど真ん中まで来ると、一人の女性が、道路をぼんやり眺めていた。  まるで、その女性を追い掛けて来たように、母雲の足は、その場で止まる。 「……あら? ……何か……私にご用?」  遠く道路を眺めていた女性は、OL姿の黒色レディーススーツに身を包み、白いシャツとシンプルであり、茶髪の長い髪を後ろで纏めており、年齢で言えば二十代半ばを思わせる、大人の女性だ。突然、女子高生三人が足を止めたので、やや驚いている様子もある。  その姿を目にして、愛菜は、半信半疑。それはそうだ。此処まで来たが、少なくともこの女性と周辺から、妖気を感じる事がないのだ。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

131人が本棚に入れています
本棚に追加