祓魔師と陰陽師

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「ふぅ~、時間稼ぎありがとうね」  愛菜の言葉に対して、此方こそありがとうございます。と、告げる彩魅だが、女性から視線を外す事は、無い。  一方の母雲は、この光景……そう、これが結界と呼ばれたものであるのを理解した。自分で切り裂いた事があったとは言え、この色の無い世界を前に、思わず唾を飲み込み、緊張感を高めて行く。  何せ、陰陽師が結界を展開し、祓魔師が目の前に居る相手を人外と判断した。それでも、女性は、目の当たりにした情景におろおろとし、何が起きているのと、困惑している。 「あのさ、いつまでも芝居しなくていいから。――あたしは陰陽師で、街で人を襲う妖魔を祓いに来たの。で、いつまで化けてるつもり?」 「――な、なんの事でしょうか?! 私は……」  それでも女性はなんの事かと、とぼけながらも、周りの変化に付いていけずに、困惑を続け辺りを見渡す。それがあまりにも自然な驚き方にしか見えない。  その中、神聖書を片手に彩魅が前に出ようとするが、その前に愛菜が距離を縮める。 「……そのつもりが無いならいいわ。あなたが本当に心当たり無いのであれば、これを当てれば分かるのよ」 「――な、なんなのよ!? あなた達は、一体何者なのよッ!! こ、こちらに……来ないでッッ!!」  合わせて後退りをする女性は怯える表情のまま、今にも走り出そうな気配だが、愛菜はそれでもジリジリと詰め寄る緊迫する最中でも……自分を崩すことないのは、狐様であった。 「クククッ、滑稽であるのう~、その程度も見抜けぬとは」  ……えっ? と呟きに反応した母雲だが、なんの事かと思う。もう此処まで追い込んでいるのに。そう、思った頃、愛菜が一気に間合いを詰めると――手にする呪符を女性に押し付けた。 「――いゃ! こ、来ないでェッ!」 「……反応が無い?」  対妖魔専に働くチカラを籠めた呪符を押し当てられ、全力で騒ぎ恐怖に染めながら声にするだけの相手を前に、予想外の展開。彩魅もまた直ぐに確認をしようとした……  ――その時、何処からか、地響きが聞こえ、歩道が揺れ動く。  急に揺れ始めた歩道は、大きな動きに耐えられるのか怪しい程で、普段聞き慣れない軋みの音が辺りに谺している。無論、建物が全てが地震が生み出し異様な音と共に揺れ続け、思わず全員の足が止まってしまう。
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