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「――な、なんですか?! じ、地震、ゆ、揺れる……」
「汝よ? いつまで踊っておる? 早く防壁展開しておくのじゃ」
何事にも動じない冷静な声が耳に届き、防壁と言われて疑問に満ちる。
「――ぼ、防壁って……うぅ、な、なんの事……ぐぅっ、なんの事ですか?!」
「じゃから、妖気で防壁を張れと言っておる」
――妖気の防壁?! ちょっと、待って下さい! と、思うのは、防壁と呼ばれたものを使った試しが無いのに気付く。
その間も、足裏が地面を踏む事すら怪しくなり、段々揺られた事で、気持ち悪くすらなってきた。
「――聖女は母雲ちゃんをッ! あたしは、あの女性を保護する!」
声を高くしながら、手には護符と呼ばれた札を片手に即座に詠唱を開始する。はい、と返事を返す彩魅もまた、神聖書を片手に術式を発動させる詠唱を口にし、一気に発動させる。
「『――護符円陣・円』」
「『――絶対聖域の盾』」
愛菜が発動させた陰陽術は、瞬く間に女性を中心に薄い白き結界となり、包み込む。同時に、彩魅が発動させた術式は、神聖書が反応を示すと、 母雲と彩魅の二人を柔らかい光が、覆う様に展開された。
――直後、凄まじい衝撃が空気を振動して辺り一面を駆け抜け、一同の展開した防壁を直撃する。激しい衝突が電気の様に、バチバチと反発して音を鳴り散らす中、その方向を自然と探す。
「ほう~灰色の防壁も、なかなかではないか」
母雲の肩で、満足そうに口にする狐様は、外来退魔術式に少しだけ興味を示していた。遠く古い記憶の中では、具現化させた天使と呼ばれた存在で闘いを挑まれたのみ。術者も一人前に使えるのかと思っていれば、彩魅の声が緊迫する。
「……これは、結界が侵食されています」
紅玉の瞳が衝撃荒れる景色を前に、感想を素直に述べた。灰色の世界が、変化を遂げて行く。今ある歩道橋を始め、様々のものが徐々に白く染まって行くのだ。雪に埋もれた世界とは違い、色を塗り替えられて行く、不可思議な現象を前に、愛菜が確信する。
「――あたしの結界を塗り潰すなんてやってくれるわね……夜道怪ッ!!」
荒れた衝撃が落ち着きを見せ、世界の景色が白く染まる頃、車が通る道へと降り立つ人影へ、高く声を叩きつけ、視線がそちらに向かう。
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