第12章 卍(まんじ)

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「おっと、俺のせいにするのはお門違いだ」 手も足も出せやしないのに。 降参するように両手を上げて 「選んだのはあいつだよ。刺激的な人生を与えてやったら、愛だの恋だの――ままごとみたいなおまえとの関係などすぐに忘れたとさ」 「なっ……!」 「そんな顔するな。おまえのせいでもない。ただ人生は残酷なんだ」 律は僕を嘲笑う。 「ウゥ……」 行き場をなくした 僕の感情を封印するかのように。 「唇が乾いてる」 「ア……」 真赤なワインに浸した小指の先で 律は僕の唇に卍を描いた。
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