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「ねぇ、サエ。今月も面白い本をありがとう」
「いえ、お嬢様。お気に召していただき幸いでございます」
「ところで、サエ。毎月1冊ずつ本を運んできてくれる彼は誰なのかしら」
「お、お嬢様、何故それをご存じで・・・」
「あら、私が気が付かないとでも?毎月24日になると必ずこの屋敷に来て本を届けてくれる。雨の日も雪の日も欠かさず。私の好きな本ばかり。でも私は彼を知らない、分からない。彼の寂しそうな後ろ姿を見ていると何故か胸が締め付けられるの」
「お嬢様・・・」
「ねぇサエ、どうしてかしら」
お嬢様はお読みになっていた本から顔を挙げると、先ほど帰られたあの方の後ろ姿を追い、窓の外を見つめる
お嬢様、あの方はお嬢様の大切なお方
転落事故であの方の記憶をなくして以来、まだ思い出せないのですね
長い黒髪を揺らしながら何十冊にも及ぶ本棚に視線を移すお嬢様は雪のように儚い
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