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「あ。かちょー、そこです。そこのコンビニを右に曲がってください」
突然出てきた右手にハッとし、少し先にあるコンビニを確認してから「はい」と答え、ウィンカーを上げた。
「あとちょっとですよ」
俺の方を向き、ニコッと笑う彼女は今日も警戒心ゼロ。
「そうですか」
それは分かってはいても、あの夜みたいな事はもうしない。
『昨夜はご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした』
そう言って深々と頭を下げた彼女の目が泳いでいたから。
いつもと同じように振る舞ってはいても
隠した頬が微かに染まる。
不意に触れた指、呼んだ声に身体を小さく揺らす。
彼女があの時の記憶を意識的に閉じ込めている事に、俺は気がついてしまった。
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