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「…じゃ、じゃあ。」 「決まりだな。大通りのちょっと奥まった場所にいい店を知ってる。…そこでいいか?」 「はい。」 楽しそうに笑った一之瀬さんは、「ケーキ分の腹は空けておけよ。」と言いながらゆっくりと歩き出す。 ほんの少し夜風が冷たかったけれど、隣に一之瀬さんが並んでいるせいか温かいような気がする。 お店までの道程は、僕がお店に顔を出さない間に新商品が増えた事。 秋に向け店内の小物が変わった事。 レジの女の子はやっぱり僕がお店に来ない事をとても心配していた事とか。 …そういった、たわいもない話をしながら目的の場所へと辿り着く。 おしゃれな石のアプローチ。 深い青の柱の外灯に、淡いオレンジの光に灯された入口。 なんだか見覚えがある。そう思ったと同時に 「ーー…ぁ。」 思わず小さく声を上げてしまった。 「どうした?」 「いや、ぁ。…このお店……」 一之瀬さんがお店の扉を開いたと同時に口を開いたら 「いらっしゃ……ぁ、奏多くん!」 見慣れた顔の女性が笑顔で出迎えてくれた。 「ま、真宮店長!…ど、どーも。」 しどろもどろになりながら軽く会釈をするけれど、話すのに夢中になっていて今の瞬間まで全く気付かなかった。
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