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「こっ、これで勝ったと思うなよ!恥かかせやがって!」
社長はありきたりで薄い捨て台詞と共に逃げた。
あんな風な大人にだけはなりたくない。
「さくら」
「はい」
「……どこにも行かないでね」
あんなに負け犬で意地汚くて卑しい人一人でさえ私だけで追い払うことはできない。
「私はひどい人間なの。ごめんなさい。
さくらがいないと生きていけないの。さくらがいないと強い私を保てないの」
彼女はぽつり、とわたしはどんな先生でも好きですよ、となぐさめでもなく言った。
私は彼女を下に見ている。そして私が強いと思いこんでいる。
なんて自分勝手で傲慢でずるいのだろう。
そんな私と彼女はどうして一緒にいてくれるのだろう。
私は立場を利用して、知らず知らずのうちに彼女を縛り付けていたのかもしれない。
しかしそれを解き放てば自分が壊れてしまうと自覚したときにほどく手を止めてしまう私はやっぱり自分勝手で傲慢でずるい子どもだ。
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