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二人とも、笑っていた。
決してうまくはいかなかったけれど、その事実はどんなご褒美よりも嬉しかった。
「はよ逝けや……」
祐天坂君が示ちゃんに言う。
「兄はうるさいし! 死ね」
示ちゃんも応戦している。
「人様に死ねとか言うな。親しき仲にもなんとやらはもう習っているだろ。その前にお前が死んでるだろうが」
「あー! 最低! 死人に死んでるとか暴言にもほどがあるし!」
「じゃあ生きろ」
「もっと最低! 兄こそ生きろ! って、これじゃあ罵倒にならないか。むしろ名言みたいになっちゃった。あはは」
そのやり取りに、私は思わず頬を緩めてしまった。
もう、メッキで繕ったオリハルコンのセカンドステージは終わりだ。
セカンドステージがファイナルステージにはならなかったけれど、世界に啖呵を切った私のサードステージは果たしてどんなものになるのか。
よく見慣れた兄妹喧嘩を眺めながら、そんなことを考えているときだった。
「木葉ちゃん」
示ちゃんがこちらにクルリと振り返る。
茶色がかった瞳と私のそれが重なった。
「……示ちゃん」
「……ごめんね。お兄ちゃんを取っちゃったよ」
「ううん。示ちゃんは何も悪くないよ」
「仕方がなかったんだよ」
「うん。ちゃんとわかっているから」
私の答えに、しかし示ちゃんは首を横に振った。
「ちっちっち」と、いつだかのように人差し指をメトロノームのように振って見せる。
「二代目ミス研会長のくせに読みが甘いよ、木葉ちゃん。私がどうしてお兄ちゃんから木葉ちゃんだけの記憶を取ったかわかっていないでしょ?」
「え?」
思いもよらない一言に言葉がつまった。
「祐天坂君の心を守るため……じゃないの?」
私の問いに彼女は顔を崩す。
「あはは。まあ、そうなんだけどね。でもさ、それだけだったら、春休み以前の木葉ちゃんの記憶まで消す必要はないよね?」
「え?」
言われてみればだった。
「わかる? しめすちゃんからの最後のプレゼン、じゃなくって、謎。初代会長から二代目会長への卒業試験! うふふ」
まるで部活動の続きをしているかのように楽しそうに微笑む示ちゃんを前に、散々考えたけれど答えは出なかった。
「ごめん。わからなかった」
「いいでしょう! 名探偵が謎解きをしてあげる!」
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