冷たくも寂しく

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
 私は髪を結い上げることもせず、ぼんやりと雪降る庭を眺めていた。 「お嬢様。いつまでそんな寒い窓の近くにいらっしゃるのですか」  声を掛けられて意識を部屋の中に戻すと、いつの間にかばあやが七輪を用意していた。 「そのようなところにいらっしゃっても、あの方は来られませんよ」 「分かっている」 「いいえ。分かっておられません。お嬢様が風邪でもお召しになったら、あの方はご自分を責めなさるのではないですか」 「それは……」 「あの方のためにも、ご自愛くださいませ」  私は名残惜しく窓の外にもう一度だけ視線を受けると、大人しく七輪の側へと寄っていった。  あの人は、今日も来てはくれないのだろうか。もう一月も便りはない。  ばあやと二人、寂しくあの人の訪れを待つ。 ――私のために究極のアイスクリームを作ってくれると言った、あの人の。 「アイスが、食べたい」
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!