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私は髪を結い上げることもせず、ぼんやりと雪降る庭を眺めていた。
「お嬢様。いつまでそんな寒い窓の近くにいらっしゃるのですか」
声を掛けられて意識を部屋の中に戻すと、いつの間にかばあやが七輪を用意していた。
「そのようなところにいらっしゃっても、あの方は来られませんよ」
「分かっている」
「いいえ。分かっておられません。お嬢様が風邪でもお召しになったら、あの方はご自分を責めなさるのではないですか」
「それは……」
「あの方のためにも、ご自愛くださいませ」
私は名残惜しく窓の外にもう一度だけ視線を受けると、大人しく七輪の側へと寄っていった。
あの人は、今日も来てはくれないのだろうか。もう一月も便りはない。
ばあやと二人、寂しくあの人の訪れを待つ。
――私のために究極のアイスクリームを作ってくれると言った、あの人の。
「アイスが、食べたい」
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