第1話

第1章

「はぁ」
少女は退屈そうに溜息を零す。長時間に渡る読書で疲労した双眸休ませる為、視線を窓越しに外界へと投げる。一面の銀世界。木々は寒さでかまくらに籠るかの様に雪を被っている。外は氷点下を超えているに違いない。
だが少女は着物一枚、温暖な季節を連想させる装いであった。座敷内も暖房器具が装備されている様子は無い。少女とて、まるで寒がるような素振りも無く平然としていた。
──その少女は、一切の〝寒さ〟が欠落していた。
「毎日雪、雪。私からすれば有難い限りだけれど、退屈ね」
ーー面白いことが起きれば良いのに。
装飾品の一つ伺えない無機質な部屋で、誰に向けたものでもない言葉が少女の唇から紡がれた。丁度その時。
ーートントン。
控え目ではあるが、静寂を破るには充分なノック音が響いた。まるで少女の願いを聞いていたかの様に。
「ごめんください」
「はいはい」
少女は密かに口許を吊り上げると、玄関へ赴いた。