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「おとーさん、おじーちゃんの家まであとどれくらいなの?」
「ん?そうだねー……この山を越えればもうすぐだよ」
「健斗、大丈夫?酔いそうなら言いなさいよ?」
「うん、だいじょーぶ」
「彩、健斗、もうすぐ左側の窓から景色がみえるよ」
健斗とあたしは右側の後部座席に固まって窓を覗いた。
一面真っ白の雪景色で、降りやまない粉雪の向こうに町が見えた。
「さやね、おじーちゃんに会ったら、これあげるの!喜んでくれるかなぁ」
「もちろんよ。彩と健斗の作ったものならなんだって嬉しいと思うわよ」
「やったぁ!」
あたしの手には数枚の折り紙で作られた球体がのっている。
それを健斗は興味ありげにみて、お母さんはしゃべってくれる。
そんな折に、おとーさんが運転をしながら話してきた。
「もうすぐ急カーブだからね、振られてケガしないようにつかまってるんだよ」
「「はーい」」
雪道を走るあたしたちの車は急カーブのずっと手前から減速を始める。
それを遅いと思ったのか、一台の車が追い抜いて行った。
急カーブに入った時、スリップしたのか側溝にタイヤが挟まっているさっきの車があった。
カーブの一方はガケで、杉の木が何本も何本もそそり立っている。
おとーさんはゆっくり、崖に落ちないようにもっと減速した。
突然車の後ろに巨大な衝撃が走った。
あたしたちの車はそれによって高速で回転し、落ちた…
気が付いたあたしの目に入ったのは、健斗とおかーさんの顔。
健斗は眠っているようで、おかーさんは目を瞑って口から血を流していた。
あたしは声にならない悲鳴を上げた後、気を失った。
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