318人が本棚に入れています
本棚に追加
/439ページ
この瓦礫となった校舎のように、自分の日常はもろくも崩れ落ちたが、それでも―
『二度とその手を離さないで―』
もう一人のさきと、紅美の声が聞こえた気がした。
「もう―
門が閉じる。
俺は向こうに引き戻されるだろう」
執事は気を使ってか、少し離れた新校舎の陰に居た。
「……私も行く」
野上の、何度転生しても変わらぬ硬質な黒い瞳を見つめ、砂姫は言った。
野上が虚を突かれたような顔をする。
「それは―」
最初のコメントを投稿しよう!