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「……さまーっ」
誰かが私を呼んでいる―
遠くから聞こえる声に、瓦礫の下にいた紅美は目を覚ました。
う、と小さく声を上げる。
ちょうど瓦礫と瓦礫の間に居たが、誰かが此処に、そっと下ろしてくれたのを覚えている。
あれは、誰だったろう。
『お前には迷惑をかけた。
私の最後の力で、二度と地上に芽を出すことのない種に、一度だけ力を与えよう』
そんな声が耳に残っていたが、その声の主と腕の主は違っていたようだった。
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