2人が本棚に入れています
本棚に追加
憎念に駆られていた僕は、それをすっかり忘れて。
無謀な戦いをしようとしていたんだと
今、思い知った。
師匠に言われた事を思い出す。
『お前が雷山に挑む事は、斉天大聖が菩薩に戦いを挑むようだ』
意味がようやく理解出来た。
僕はまるで菩薩の掌に小便をかけようとする。馬鹿な斉天大聖ーつまり、『西遊記』の孫悟空なのだ。
「安心しろ、小倅。事と次第に拠っては」
と言った雷山が僕の前に膝をつき、僕の顎をとって上に向かせる。
「お前を生かしてやっても良い」
頭の中が真っ白になった―
生かす?
どうして?
僕を
何の為に
「お前には特別に教えてやろう。雷鳴は、確かに私が殺す。しかし、それは私欲や怨恨のせいでは無い」
「じゃあ・・・何の為に・・・」
欲でも無ければ、恨みでも無いのならどうしてーあれだけ信頼していた雷鳴大法師を殺そうとするのだろう。
わからない
雷山のやろうとしていることが
僕にはまるでわからない・・・
「お前」
雷山の目が、一瞬、優しくなった―でも・・・・・・
最初のコメントを投稿しよう!