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「まさか…」
僕はそう呟き口唇を噛みしめる。
まさか真逆マサカMASAKA―
頭の奥底からその『疑念』が無限ループして意識を灰色に染め上げる。
「な・・・」
僕が言葉を発しようとしたその刹那、世界が回転した。
―ダァン!!
まず腹部に悲鳴1つ上げられないほどの強烈な痛みと衝撃、僕の胸腔が急速に収縮する。
次に背中に何かが叩きつけられ、左手と右腕にどんな厳しい修行よりも苦しいほどの強烈な激痛、そして顎が何か固いものにぶつけられた―
い、一体・・・・・・
渾身の力を込めて顎を持ち上げると僕の顔の骨が悲鳴を上げそうになる。
けれどもそれでなんとか振り向くと、思いもがけない『現実』が僕に襲いかかっていた事を知った。
僕を公園のアスファルト張りの床に押し付けていたのは想像にもしない存在だった。
人ではないどころか、『生物』であるとも言い難いモノ。
それは
全長3メートルはあるであろう巨大な体躯の『異形』の黒蟻の腹部の足が3節も僕の身体にのし掛かっていたのだから。
(こいつ・・・実体化した憑鬼!?)
と、思考が巡ったのちに重要なことを思い出したー
雷山は大陰陽法師として畏怖と尊敬を集めていたと同時に『優秀』な蟲毒の使い手でもあったのだ!
蟲毒。
瓶の中にありったけの毒蟲を詰め込み同士討ちをさせ、最後に残った最も強い『毒』を持った毒蟲のことだと、姉弟子が僕の頭を小突き回しながら教えてくれた。
そして、僕達の流派、『雷光流退魔陰陽術』においての蟲毒使いのトップは憎き雷山であることも伝え聴いていた。
そして、
当の雷山は僕の術をわざと浴びることで僕の油断を誘い、特殊な法術によって巨大化した蟲毒蟻を僕にけしかけたのだと、今更になって思い知った。
「小僧」
先ほど僕を仲間に誘った時と同じ人物では思えない程に冷えきった、まるでつまらないモノでも相手にしているかのような。無感動な声音で雷山が口を開く。
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