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「何考えてるの」 「いや、何も」 「嘘、ぼんやりしてたわ」 「ちょっと眠いだけ」 「せっかくカノジョが家にいるのに……」 「自分の部屋だから眠いんだよ」 「さっき、張り切り過ぎた」 「ああ、それはあるかも」 「ねえ、わたしは本当にあなたのカノジョなの。健の方は単なるセフレとか思ってるんじゃない」 「実はさ、ぼくってセックスがあんまり好きじゃないんだ。でも恵(めぐみ)とはしたいから彼女だと思うな」 「複雑な人ね」 「そうかなあ、却って単純だと思えるけど」 「わたし、健のことが良くわからない……ときがある」 「全部解れば苦労はないよ」 「そりゃあね」 「初恋の人のことが聞きたいな」 「幼稚園の先生だったよ」 「それって公式回答、それとも……」 「公式回答って何なのさ」 「健は絶対に言わないわよね。自分が本当に好きな人のこと」 「だから恵(めぐみ)だって言ってるだろ」 「じゃ、あたしと結婚できる」 「いいよ。でも先の話」 「そんなに簡単に嘘吐かないでよ」 「どうして嘘だってわかるんだよ」 「知りたい」 「別に……」 「じゃ、言わない」 「じゃ、聞かない」 「水、飲む」 「そうだな」 「取って来るわ」 「ありがとう」 「エビアンとクリスタルガイザー、どっちがいい」 「エビアン」 「あらやだ、ヴィッテルとコントレックスまで入ってる。いつから水フェチになったわけ」 「コーヒーとかお茶とか避けてたら水ばっかりになったんだよ。クリスタルガイザーも富士山のバナジウム天然水も嫌いじゃないよ」 「そういえば健、コーラとか飲まないよね。炭酸水は嫌い」 「ペリエとかサンペレグリノ程度なら大丈夫かな」 「そっかあ。あたしって健の何にも知らないんだね」 「ぼくだって同じだよ。でも困ることじゃない」 「まあね。でも今は健のこと全部知りたいんだ」 「ペドフィリアだってわかったらどうするわけ」 「なんだ小児好きだったのか。じゃ、初恋の人は男の子だね」 「そゆこと」 「嘘つき」 「でも最初にキスした他人は男の子だったよ。これは本当」 「へえーっ。で、シチュエーションは」 「お芝居でぼくが女の子役だったんだ。でも台本にキスシーンはなかったけどね」
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