1 本当のこと

9/9
前へ
/107ページ
次へ
1-11 「ぼく、ぜったいに無事で帰ってくるから」 「当たり前だよ」 「待ってて」  え? と思う間もなく、ティオが頬にちいさなキスをして去っていく。 「なに……、どういう意味」  熱くなった頬を押さえる私に、答えをくれるティオはもう、姿を消していた。  わああ……、と、ときめく胸をおさえる。  さっきの、さっきのイグノトルさまは、結婚する約束をした恋人を待ってるみたいだった。  行っておいで。  その声を、言葉を胸に閉じ込める。  必ず、帰るために。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71人が本棚に入れています
本棚に追加