2 再会の池

4/14
前へ
/107ページ
次へ
2-3 「ほら、間に合わなくなるから」 「……はい」  なぜか遠慮がちに、ティオがその手を取る。  力を渡す時に、気配は隠せない。 「あ……」 「……ごめん」  彼女への嫉妬や、ティオへの気持ちも透けて見えたはずだ。  ううん、とちいさく言って甘えるように身を寄せてくる。  なぐさめのつもりなんだろうか。 「……あなたと離れたくないけど、行かなくちゃ」  なぜ、そんなことを言うのか。 「天使の力、蓄えられた?」 「……うん」  幸せそうに、笑う。 「あなたが補助してくれて、嬉しい」  慣れ親しんだ天使の力だと無駄がないから、そう思うのだろう。  ティオが輝きに身を包み、一角獣の姿にかわる。  アルビノ個体のティオは全身が真っ白で、毛並みも艶やかで透き通るように輝いている。呼吸するのを忘れそうなほど、美しい姿だ。 『行ってきます』 「……うん、気をつけて」  こんなティオに愛されている女はとんでもなく幸せ者だ。なのに、長く滞在するわけではないとはいえ、見送りにすら来ないなんて。  再会の池に、純白のティオが飛び込んだ。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71人が本棚に入れています
本棚に追加