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2-3
「ほら、間に合わなくなるから」
「……はい」
なぜか遠慮がちに、ティオがその手を取る。
力を渡す時に、気配は隠せない。
「あ……」
「……ごめん」
彼女への嫉妬や、ティオへの気持ちも透けて見えたはずだ。
ううん、とちいさく言って甘えるように身を寄せてくる。
なぐさめのつもりなんだろうか。
「……あなたと離れたくないけど、行かなくちゃ」
なぜ、そんなことを言うのか。
「天使の力、蓄えられた?」
「……うん」
幸せそうに、笑う。
「あなたが補助してくれて、嬉しい」
慣れ親しんだ天使の力だと無駄がないから、そう思うのだろう。
ティオが輝きに身を包み、一角獣の姿にかわる。
アルビノ個体のティオは全身が真っ白で、毛並みも艶やかで透き通るように輝いている。呼吸するのを忘れそうなほど、美しい姿だ。
『行ってきます』
「……うん、気をつけて」
こんなティオに愛されている女はとんでもなく幸せ者だ。なのに、長く滞在するわけではないとはいえ、見送りにすら来ないなんて。
再会の池に、純白のティオが飛び込んだ。
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