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2-7
力を調整しろだなんて、どの口が言ったのか。
握ってきた手のひらに違和感があり、そっと開かせる。
「……え?」
ありえない。こんなことは、起こるはずがない。
ティオの手にはふたつの輝く輪があった。
「まさか、百の感謝……?」
いや、行って戻ってきただけだ。そんなはずはない。
だが、ティオの気持ちがそれほど深く確かなものならば、不可能ではないのだろう。
知らない女の指を飾るものを、苛立ちを抑えて手に触れる。
瞬間、輪が輝きを失い、ちいさな音をたてて霧散した。
「……あ!」
キラキラと、手のひらから砂のように落ちては消えていく。
私は、何てことをしてしまったのか。
ティオの結婚に賛成できない邪な心が、ティオの努力を壊してしまった。
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