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2-9
「私が、君の結婚に反対してたから……壊してしまった」
「なにを?」
壊すようなもの、あったっけ? と思う。
「百の感謝」
「えっ?」
そんなの、あるはずがない。
ぼくが地上で思っていたのはイグノトルさまだし、人間にだって出会っていない。
「ご……めん」
泣き出しそうに苦しげな声で。
「そ、それ本当に百の感謝だった? 見まちがえじゃない?」
「実物を見たことないからわからないけど、君の手の中に輪がふたつあった」
「うそ……」
ぼくとイグノトルさまの恋が、本物だと認められたなんて。
「本当に、ごめん……」
でも、それならイグノトルさまが触って壊れるはずはない。
「ぼく、ちがうと思うよ」
「……気休めは、いいよ」
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