2 再会の池

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2-11 「やっぱり来た? イグノトル医師なら来ると思ったんだよね」  カシクさまが、のんきに笑っている。  あんまり広くないよ、と言われたおうちだけど、いくつかの部屋もあるし、医務室の奥に比べたら、とても広い。  カシクさまは一人暮らしで、本当は実家があって、でも病院からは遠いから、小さな家を借りてるらしい。  イグノトルさまみたいなとんでもない規模ではないけど、カシクさまもすごい貴族だった。 「どして、イグノトルさまが来ると思ったの?」 「君が心配だからだよ」  自分の予想が当たったからなのか、嬉しそうだ。 「どして、カシクさまは来なかったの」  ますます、嬉しそうに笑う。 「うん、どうしてだろうね」  訊いてるのはぼくなのに、はぐらかして答えてくれない。 「カシクさま、意地悪だ」 「出て行く?」  にっこり笑った。 「わあ! うそ、うそっ!!」  きゃー、と否定を示して手を振りまわす。
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