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2-13
なぜ、イグノトルさまじゃなきゃだめなんだろう。
カシクさまだって優しいし、色んな天使さまにも出会ったから、最初の主の当たりが悪かっただけなんだとわかった。
でも、イグノトルさまに惹かれたのは、なぜだかわからない。
「恋は、落ちるものなの?」
「落ちるよ、突然にね」
「音はするの?」
かわいいなあ、と髪をなでてくる。
「するよ。ガッシャーンって」
なんか、適当なことを言われた気がする。
「わりといい加減なんだね、カシクさまって」
「普通だよ。イグノトル医師が真面目だからそう見えるんじゃない?」
「真面目……かなあ」
「だと思うよ。もし私だったら、恋した相手を半年も子供として扱うなんてできないだろうな……」
「養育期間だからだよ」
「生まれて半年は過ぎてるでしょ? それなら、養育する義務はないしね」
「知らなかった……」
ぼくは、ずっとイグノトルさまの愛情に守られていたんだ。
大事に、大事に。
あの白く美しい翼に、包まれるように。
「ぼく……」
ガッシャーンて、音がした。
いま、また、恋をした。
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