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3-1
3 地上へ
どうして、いるんだろう。
悲しい顔をして、それでもぼくの目の前に。
再会の池の、前に。
なにも言わないでそっと近づくと、視線だけが外された。
「カシク、また来てない」
もし今回もカシクさまが来なかったら、天使の力が不足して、ぼくが危ないと思って来てくれたんだろう。
そっけなく差し出された手をつないで、力をもらう。あ、と思い出し、その指の太さを知りたくて全部の指をからめた。
うん、ぼくと同じくらいだ。
「いつまでこんな……っ」
振り絞るような声に、え、と思う。
イグノトルさまの、慌てている顔が、なぜかゆっくりと離れて倒れていく。
指を振りほどいた勢いが余って、そのまま、池に落ちていった。
「はぅ!!」
天使さまが地上に落ちたら命が危ない。
あわてて後を追い、支えを求めて伸ばされた手を、その手首を掴んだ。
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