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3-2
何とか掴むことはできたけど、引き上げることは、できない。
もうこうなったら、一緒に落ちる。
「……いい、私は大丈夫だから離せ!!」
「離さないっ!!」
叫んだ。
でも、掴んだままだと姿を変えられない。
引力のままに、地上へ叩きつけられてしまう。
そうだ、ぼくが下になればいい。少しでも、その衝撃が軽くなれば、イグノトルさまだけでも助かるかもしれない。
「ティオ、離せって!!」
「いやだ!!」
「人間に見えない術、かけろ。法に引っかかる!」
ああ、真面目だなあ、と思う。
自分の命がかかってるのに、法律だなんて。
でも、天使さまが人間に見つかるわけにはいかない。
術をかけると、すぐに大きな音がして、上に引っ張られるような感覚がした。
イグノトルさまが、翼を広げていた。
「……あ」
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