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3-3
そうだった、落ちないんだった、このひとは。
羽ばたく翼が当たらないようにぼくを抱きしめ、風を捕らえてゆっくりと旋回しはじめる。
「……だから離せって言っただろ」
「うん……」
「離すよ。姿、変えられるね?」
「ぼくの後ろ髪、掴んでて」
そのまま、姿を変えてイグノトルを背に乗せる。
無事、はぐれることもなく地上に着地した。
「はあ、危なかったあ……」
「何が危ないだ、私を道連れにする気か!」
「怒るの後でっ! 清浄な空気のある場所に行かなくちゃっ」
「聞けよ!!」
「聞くのはあなただ!!」
譲るわけにはいかない。天使さまには危険すぎる場所だ。
「ティオ……」
ぼくの勢いに、びっくりしたように静かになった。
「地上は危ないんだ、お願いだからぼくの言うことをきいて」
「うん……」
素直に、うなずいてくれた。
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