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1 本当のこと
病院にたどり着き、受付でカシクバートの担当を尋ねると、今は外来診療中だという。
「そっかあ……」
どこも悪くないのに診察をお願いするのは、本当に病気で苦しみながら順番を待っている患者さんたちの迷惑になる。
勤務が終わるまで、待っていようかな。
「お!」
「……お?」
その声のしたほうを見ると、イグノトルが毛嫌いする上司というひとだった。
名前は、聞かなかったからわからない。
「どうした、病気か怪我か、イグノトルでわからんならうちでは診れないぞ」
白衣姿で、豪快に笑っている。
「えっと、カシクさまに用事があって」
「今は……、診療中だな」
上司のひとは壁に貼り出された医師の当番表みたいなのを見ながら、言った。
「終わるまで、待っていてもいいですか」
「イグノトルの用事なら、俺が代わりに聞こうか?」
「あの……、ぼくの個人的な相談で」
「イグノトルにできない相談か?」
「えっと……」
どう言おうか言葉を選んでいると、上司のひとは白衣の女性を呼び止めて何か話している。
お仕事の話かな、と思っていると、こちらに視線を戻した。
「おいで、談話室で話そう」
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