1 本当のこと

3/12
71人が本棚に入れています
本棚に追加
/112ページ
1-2  上司のひとの背中を追いかけるようにして、廊下を歩く。  病院は、きらいじゃない。イグノトルさまと同じ消毒薬のにおいがするから。  ……だめだ、彼のことを考えちゃだめだ、悲しくなる。  談話室には、誰もいなかった。 「あの……」 「カシクなら、もうすぐ来る」 「……え?」 「白いティオは目立つからな。何かあったらイグノトルに悪い」 「でも、診療中……」 「医者にも休憩時間ぐらいはある」 「ぼくをひとりにさせないために?」 「いや、イグノトルに恩を売る」  イグノトルさまがこのひとを嫌う意味が、ちょっとだけわかる気がした。
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!