1 本当のこと

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1-6 「イグノトル医師も、君が好きなんだね」 「……うん」  かあっ、と頬があつくなる。 「じゃ、結婚できるように地上の勉強しようか」  カシクさまは、やさしい。 「はいっ」 「じゃ、血液検査するけど大丈夫?」 「う……」 「結婚するんでしょ?」 「い、痛くないように、して」 「それは難しいなあ」  ははは、と笑ってる。 「やっぱりやさしくないっ!」 「適性検査にやさしさはないよ?」 「うー……、確かに」 「それと、地上に降りる許可を取るには主の署名がいるから」 「えっ……」 「そこは、自分で何とかできる?」  イグノトルさまに、会える。だけど今は、悲しい顔をさせるだけ。 「ぼく……間違ったこと、してるのかな」 「ティオの結婚は難しいからね。ましてや相手が……だから」  ぼくだよ、って、安心させてあげたい。  でも。 「もらってきます、署名」
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