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1-7
ティオのいない現実に、今は耐えられなくても慣れるしかない。
イグノトルは書棚の隙間を無理やり詰めた。
ふと、ノックの音に、涙のあとを拭って医務室に向かう。
「……はい」
「カシクバートです、こんな時刻にすみません」
なんだ、とがっかりする。ティオが戻ってくるわけはないのに。
「なに、忘れ物でもした?」
「いえ……、お話が」
「……うん」
深刻な顔に、どうぞと招き入れた。
「あなたの白いティオの、ことなんですけど」
「……え」
「私に、地上への補助をしてほしいと。いま、彼を預かってます」
「ああ……そう、君のところへ行ったのか、私はてっきりトリノ伯爵のところだと」
「ティオの結婚に、反対だそうですね」
「あの子が、話した?」
「ええ……」
「相手、どんな女?」
はあ、とため息をつかれた。
「……なにそれ、最悪な予感しかしないんだけど」
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