1 本当のこと

4/12

71人が本棚に入れています
本棚に追加
/112ページ
1-3  やあ、お待たせー、といつも通りの笑顔でカシクバートが姿をみせた。 「あ!」  じゃあな、と上司が立ち去る。  本当に、ぼくをひとりにさせないためだけに、そばにいてくれたらしい。  うっかり、やさしいひとだと勘違いしそうになる。 「イグノトル医師に言えないようなことかな?」  な? と、微笑んでくれる。  カシクさまは、本当にやさしい。 「えっとね、ぼく……」  どう言えばいいのだろう。 「言いにくいことかな。医者は相談事に慣れてるし、誰にも言わないから大丈夫だよ」  にこりと笑ってくれた。  その笑顔に安心して、話しはじめる。 「ぼく、イグノトルさまに地上に行きたいって言ったら反対されて……、王宮、出てきちゃった」 「あらら、おつかいが出来たばかりだと思ってたら、もう家出かあ……。ティオの成長ってすごいね」  誉められた、みたいだ。主と意見が衝突するのは、ティオにとってあまりいいことじゃないんだけど。
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71人が本棚に入れています
本棚に追加