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やあ、お待たせー、といつも通りの笑顔でカシクバートが姿をみせた。
「あ!」
じゃあな、と上司が立ち去る。
本当に、ぼくをひとりにさせないためだけに、そばにいてくれたらしい。
うっかり、やさしいひとだと勘違いしそうになる。
「イグノトル医師に言えないようなことかな?」
な? と、微笑んでくれる。
カシクさまは、本当にやさしい。
「えっとね、ぼく……」
どう言えばいいのだろう。
「言いにくいことかな。医者は相談事に慣れてるし、誰にも言わないから大丈夫だよ」
にこりと笑ってくれた。
その笑顔に安心して、話しはじめる。
「ぼく、イグノトルさまに地上に行きたいって言ったら反対されて……、王宮、出てきちゃった」
「あらら、おつかいが出来たばかりだと思ってたら、もう家出かあ……。ティオの成長ってすごいね」
誉められた、みたいだ。主と意見が衝突するのは、ティオにとってあまりいいことじゃないんだけど。
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