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ムッとする熱気の中、金属同士がぶつかる高い音が響く。
やがて、それが止むと、汗で全身をビショビショに濡らしたお父さんが出てきた。
「お父さん、お疲れさま」
声をかけながら、タオルをそっと差し出す。
「おお、ありがとう」
タオルに頭を埋めるお父さんの脇を抜けて鍛治場を覗くと、そこには十字架のようにも見える立派な剣。
儀礼に用いられるロングソードだろうか。
煌めく刀身は聖剣エクスカリバーのような美しさを魅せ、
その美しい形は、扱う騎士の心の純潔さを表しているのかもしれない。
騎士道物語は、僕が大好きな物語だ。
みんな、強くて、かっこよくて、すごい武器を持っている。
アーサー王ならば聖剣エクスカリバー。
その配下のランスロットなら、アロンダイト。
僕もそんな騎士になれたらいいと思う。
「ねぇ、お父さん。僕が叙勲を受ける時は、これよりもっと立派な聖剣をつくってね!」
「んー、今更騎士道の時代じゃないと思うし、叙勲なんて平民はまず受けれないと思うが、まぁいいだろう」
「やった!約束だよ!」
「あぁ、約束だな。
でも、条件がある」
条件?なんだろう。
はしゃいでいた僕は、突如、真剣な眼差しになったお父さんに少し驚いた。
「剣、いや武器に聖や魔があると思っている間は武器を持ってはいかんぞ」
?僕にはお父さんの言っていることが理解できない。
どんな物語にも、聖剣があれば対となる邪悪な魔剣がある。
禍々しい剣と同じく、邪悪な醜い人間が、聖騎士の敵として出てくるのだ。
「え、どうして?聖剣は神聖なものだし、魔剣は邪悪なものだよ」
「武器に聖も魔もないさ。
いや、魔しかないかもしれんな。
武器は人を魅了する。
どんな武器でも、使い手を悪魔に仕立てあげる。
使い手が武器を持つ意味を正しく理解しないとな」
そんなこと、あるわけないよ。
聖剣は正しい力で、邪悪を裁くんだから。
聖剣に魔の力なんてありえないよ。
言われたことが上手く理解出来ず、返答に窮する僕に、お父さんは僕の頭を優しく撫でた。
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