89人が本棚に入れています
本棚に追加
私は言われた通り縄に首を通した
それを確認する二人
「貴女はずるいです」
「今まで一度たりとも名を呼んでくれなかったのに」
「「今になって呼ぶなんて」」
何かに堪えるように奥歯を噛み締める二人
それでも彼らの手が止まることはない
着々と死への時間は近づいていってる
「アリナ様!待って…待って下さい!」
民衆を払い除け此方に向かってくる男
王様の秘書兼私の護衛
「ナイル…」
「アリナ様…アリナ様…!」
ふふ、いつも冷静な貴方からは考えられない真剣な表情
焦ったような口調
慌ただしい行動
「「ではアリナ様…」」
そう言って深々く頭を下げる二人
首元にはきつく巻かれた縄
もうすぐ
もうすぐで私は
最後に民衆を見下ろす
この景色はもう見ることはない
だからせめて…
私の思い出として貴方達を心の中にとどめたい
最初のコメントを投稿しよう!